君と、世界の果てで
もう、50分が過ぎた。
持ち時間はあと10分。
メンバー全員、汗だくだ。
いつも人形のような深音でさえ、茶色の髪が頬に張りついている。
その細い体のどこに、そんな力があるのか。
息は少し上がっていても、瞳は全く疲れを知らないように濡れて輝いていた。
ラスト2曲。
観客に向けて、深音が語りかけた。
「次は……新曲なんですけど。
大好きな人を想って、詞を書きました。
聞いて下さい。
“Dear you”」
そう言うと、こちらを見て、最上級の笑顔で微笑んだ。
思わず微笑み返すと、彼女は観客に向き直り。
その美しい息を、吸いこんだ。