君と、世界の果てで


「……じゃあ、上がるか」


「ううん、ここで」


「ここで?余計に負担かかるだろ?」


「逆に浮力があるから良いんじゃない?」


「……もういい、黙れ。

……あ、でも、しんどくなったら、すぐ言えよ」


「……うん……」



了承はしたが、もしかして、機能しないんじゃないか。


そんな心配はよそに、非常に複雑な胸の内とは裏腹に、体はしっかり機能した。


むせかえるようなバラの香りのせいか。


反響する高い歓喜の声が、鼓膜を震わせるせいか。


やっぱり、確信犯だな、こいつ。


できるだけ優しくしてやりたいのに、体が勝手に、激しく水面を揺らす。


深音の目に涙が浮かんだのに気づいて、やっと動きを止める事ができた。



「悪い……!辛いか……?」


「ううん……違うの。

もう、してくれないと思ってたから……

嬉しいなぁ、って……」



深音の目から落ちた涙が、水面に丸い模様を描いた。

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