君と、世界の果てで
(5)砕けた欠片
俺は3人に見つからないように、建物の影に隠れてしまった。
何故そうしたのか、自分でもわからない。
ただ耳が人よりいいのはこんな時にも役に立つのだな、とどうでもいい事を思った。
ここからなら、何かあってもすぐに助けられる。
「用件は何?」
「せっかちな子ね」
「あなたは、陸と翼さんの元恋人でしょう?
どうして智と一緒にいるの?」
「……目的が一致してるからよ。
貴女の周りを探ってたら、中学時代の顔見知りの彼を見つけたの」
紗江が、冷たい声で言った。
もう春だというのに、黒いアンサンブルニットとグレーのタイトスカートに、黒いロングブーツをあわせている。
智もまた黒いシャツに濃い色のジーンズを履いていて。
薄いブルーのワンピースを着ている深音の方がおかしく見える。
「目的って?」
「私達は、貴女と翼を別れさせたいの」
紗江の目も、声と同じように、見た事がないくらい冷たい。
深音はそんな紗江を黙って見つめた。