君と、世界の果てで
彼女が、ハラハラした瞳で、こちらを伺う。
「あ、彼女さんっスか!美人っスね!
さすが、ツバサさん!」
「そう、デートなんだよ。邪魔すんじゃねぇ」
そんな事を言っているうちに、客席の灯りが落ちた。
一瞬、辺りが静まり返る。
舞台のライトが点くと、今まで見えなかった埃がふわふわ浮いてるのがわかった。
観客が見つめるステージに、1組目……弟のバンドのメンバーが現れた。
一部の観客から、歓声が聞こえる。
見慣れた、銀髪の男が、俺の弟。
「リクー」
女の子の歓声に、弟はヒラヒラと手を振る。
端整な顔立ちの陸は、昔から女に人気がある。
細いその腕で掴んだ黒と白のボディのベース。
RB620は、俺のお下がりだ。
Tシャツに革のジャケットを羽織っている。
耳に付いた沢山のピアスが、照明に反射した。
そういえば、何ヶ月か前に、ボーカルが変わったと言ってたな。