君と、世界の果てで
こつ、と、深音の木底の靴がなる音がして。
荒い息の間から、愛しい彼女の声が聞こえた。
「……さよなら……」
涙に濡れたその声は、悲しく響いて、消えた。
やがて、階段を降りていく音がする。
体が動かず、追いかけられない。
陸に頼まれて、深音に近づいて。
俺なりに、彼女を愛して大事にしてきたつもりだったのに。
深音は、初めから俺を憎んでいた。
本当って、何が?どこからどこまで?
結局、俺の一人芝居だったのか。
もう、道化を演じるのはまっぴらだ。
右手の中指にあった、陸の指輪を乱暴に外し、床に叩きつける音と同時に。
玄関の木製扉がギイ、と鳴いて開き、すぐに閉じた。
それが、俺達二人の世界の終わりの音だった。