君と、世界の果てで
「そうか……じゃあ、仕方がないね……」
「本当に、すみませんでした!」
崇文が頭を下げると。
若さのわりに少しハゲているが、人の良さそうな事務所の社員は、笑った。
「大丈夫だって、そんなに謝らなくても。
でも、残念だなぁ。
彼女が抜けたら、確かにメジャーデビューは遠のくもんな」
「いや……遠のくって言うか……完全に、ないでしょ……」
しょんぼりと崇文はうなだれた。
それを社員は意外そうに見つめた。
「いや?ない事ないんじゃない?」
「は?」
「彼女だけが目当てなら、最初から彼女だけに会いに行くよ」
社員は、人の良さそうな顔でにこにこと笑った。
「それって……」
「僕は、君達の音も好きだよ。
特に、君」
「はいっ?」
突然指をさされ、面食らってしまう。
「君のベースは、プロでも通用するよ」