君と、世界の果てで
「ベースの君、歌える?」
「俺っ?……ですか……?」
「うん。見た目に一番、華があるから」
崇文と渚が、俺を挟んで座っている。
両方から顔を見られ、どちらにも背けられない。
「翼さん……歌は苦手なんすよね?
み、……誰かが言ってたけど」
深音が突然いなくなり、俺がそれについて何も話さないので。
他の二人の間では、俺と深音が別れたと、想像がついたらしい。
「いや?下手じゃないよな、翼」
「……苦手だ」
「渚さん、聞いた事あるの?」
「いや、これがうまいんだよ、意外と。
性格的に、目立つのが苦手なんだ」
「……だから苦手だっつってんだろ……」
まさかの展開だ。
ボーカルを変えるなんて、考えた事もなかった。
この話が済んだら、バンド自体解散だと思ってた。
俺に歌えだと?