君と、世界の果てで
結局、俺はまだ海辺の家にいる。
深音が帰ってくるかも、なんて期待をしてるわけじゃない。
落ち着いたら、荷物もあいつの実家に返してやろうと思っている。
ただ、編曲作業や練習に都合がいいだけだ。
ケータイの待受画面は、2時間かけて変更した。
ほのかに残っていた、彼女の甘い香りも。
すぐに、煙草のにおいに変わった。
会議の日から、本当に俺の周りは慌ただしくなった。
平日は、会社に行って、慣れない仕事をして。
帰ってから、編曲をして。
土日は、ギターを持って海へ向かい、歌の練習をした。
俺を悩ませたのは、歌詞の編集だ。
特に、“Dear you”。
親愛なる、あなたへ。
どうすりゃ良いんだよ、これ……。
しょうがねぇな。
プロになりたいなら、これくらいできないと。
渚の言う通りだ。