君と、世界の果てで
最終章
(1)再会、そして
もやもや悩んでいるうちに、5月の連休が、練習三昧で終わってしまった。
今日からはまた仕事だ。
それにしても。
社会人が、こんなに大変だとは……。
どんなに眠れなくても、体調が悪くても、関係ない。
仕事は待ってはくれない。
先輩の後ろについて、建築現場と事務所を1日に何往復もしなければならなかった。
そんな忙しい平日の昼休みに、携帯電話が鳴った。
会社の屋上で、吸いかけた煙草を片手に持ったまま、電話をとった。
「はい、堺沢です」
会社用ではなく個人のケータイなのに、バカ丁寧に出てしまう。
ほとんど無意識だった。
『あっ、あぁ……良かった、番号、変わってなかったんですね……』
聞き覚えのある、女性の声だ。
愛しいあの子の声に似ている。
『碧海です……深音の、母です』
「……!」
思わず煙草を、地面に落としてしまった。