君と、世界の果てで
「来週の土曜、ライブがあるんだが」
「知ってる。崇文に聞いたよ」
「来れるか?」
深音は少し悩んだようだが、やがてこくりとうなずいた。
「なんとか、する」
「……おう、何とかしろ。気力で治せ」
「ふふ、頑張ってみる。
ほら、早く戻らなきゃ」
「あぁ……じゃあ、待ってるから」
肩を抱き、触れるだけのキスを、した。
さら、と茶色の髪が指にかかる。
「お前のためだけに、歌うからな。
“Dear you”は、お前への……ラブレターだから」
彼女は涙を一粒こぼして、微笑んだ。
「……うん」
まだ、抱きしめていたかった。
できれば、ずっとそばにいたかった。
この時どうして、真面目に会社に帰ったりしたのか。
悔やむ日は、すぐそこに来ていた。