君と、世界の果てで


久しぶりに陸の指輪を右手につけて。


深音が作ってくれた服を着た。


5月には少し暑く、腕を捲ると、右腕の火傷の痕が露になる。


包帯か何かで隠そうかとも思ったが、そのままにした。


もうこれは、俺のトレードマークみたいなものだと思おう。


ベースをトランクに積んで、駅前のコインパーキングまで車で行って。


そこからライブハウスまで、ベースを担いで徒歩10分だ。


裏の通りを歩くと、裏口が見えてくる。



「げっ……」



裏口には、チラホラと人がいた。


タイバンの他のバンドのやつや、入待ちの女の子達。


急に、緊張してきた。


深音がいないだけで、自分は不完全だという気がする。


いかん、こんな弱気じゃ。


メジャーデビューがかかってる。


何より、深音が、待ってる。


ふと反対側を見ると、硫酸をかけられた、ビルの駐車場があった。



「……?」



ピリ、と小さな電流が、右腕を走り抜けた気がした。

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