君と、世界の果てで
彼女は、片手でライターを差し出している。
シンプルな黒いスーツに、黒いパンプスを身につけて。
金色だった髪は、漆黒に染められていた。
彼女の後ろには、ライブでギターを弾いていた男が傘を持っている。
「俺のです。使って下さい」
ギターの彼が、言った。
「あぁ……悪い。やっぱ、いいわ」
声を出すと、自分が思ったよりかすれている事に気づく。
ミオは、ライターを後ろの男に返した。
「悪いな……弟が迷惑かけて。
顔、見てってくれるか」
「はい……」
既に男は泣きそうな顔をしていた。
「ところで、何で知ったんだ?
身内にしか、声かけてないんだが」
「それは……こいつが」
彼は、彼女を見た。
彼女が、ゆっくりと口を開く。
「私が……第一発見者なので」
手から、煙草が箱ごと落ちた。
そうだ。
警察に聞くのを忘れていた。
第一発見者が、誰か。