君と、世界の果てで
痛い。
治ったはずの右腕が、ピリピリと痛む。
何故だ?
気のせいか?
硫酸事件の現場を見たりしたから。
「そうだよな……きっと」
右の指を開いたり握ったりしてみると。
いつの間にか痛みは消え、普段の感覚が戻ってきた。
ビビらすなよ。
今動かなくなったら、洒落にならねぇ。
ほっと息をつき、目の前の横断歩道の信号を見ると。
まだ、赤だった。
ぼんやり立って待っていると。
後ろの駐車場から、派手なエンジン音が聞こえて。
鋭く黒い風が、自分の横をすり抜けた。
と、思ったのだが───。
その風は金属の実体を持ち、向かいにあるライブハウスに突っ込んだ。
「……!!」
風かと思ったのは、自動車だった。
何人か巻き込まれたのだろうか。
悲鳴が聞こえる。