君と、世界の果てで
坊主の読経が会場に響き渡る。
参列者が、俺達家族に一礼し、次々に焼香を済ませていく。
その中に、紗江の家族もいた。
紗江は、人目もはばからず泣いて、おばさんにたしなめられている。
幼なじみが亡くなったんだから、無理もないだろう。
陸の友人二人の登場に、周りは一瞬ざわついたが。
意外と礼儀正しい若者達は、すぐにその場に溶け込んだ。
『御仏前』と書かれた袋を渡されるまで、彼らの名前も知らなかった。
ギターの男は、関 崇文。
ミオは、碧海 深音。
へきかい、なんて普通に名字もあるのが不思議だった。
彼女の美しさは、こんな時でも、浮世離れしていたから。
彼女は、ただ静かに涙を流していた。
やがて、長い読経が終わると。
参列者を前に、棺の蓋が開かれる。
そこには生前と変わらない、陸の美しい顔があった。