君と、世界の果てで
靴を鳴らして。
光は走り出した。
彼女を捕らえようとする、警備員やスタッフをひらりとかわしながら。
まるで、ダンスのように、軽やかに。
観客達も呆気にとられるほど、美しい彼女は。
あっという間に、ステージの前にたどり着いた。
忘れるはずもない。
長い睫毛に縁取られた、大きな瞳。
つんとした高い鼻。
バラの花びらのように紅い、小さな唇。
「深音……!!」
体は勝手にステージギリギリまで走り。
膝をつき、彼女がいっぱいに伸ばした腕をつかんだ。
火傷の痕が残る右腕に、力を込めると。
彼女は靴で床を蹴り。
ふわり、と、ワンピースの裾を翻して。
ステージに舞い降りた。