君と、世界の果てで
(5)合鍵
陸の葬儀が済んで。
しばらくして、紗江から連絡が来た。
涙を流しすぎたからか、紗江の顔がぼやけて見える。
久しぶりに大学で待ち合わせをした。
キャンパス内のショボいカフェは、今日も学生や近所の年寄りで賑わっている。
俺はここのコーヒーは、酸っぱくて嫌いなので、紅茶を注文した。
「悪かったな。
大学休んで葬式来てもらって」
「行くのが当たり前じゃない。
翼は……大丈夫?ちゃんと食べてる?」
「おう。長男だからな。しっかりせんと」
「何それ」
同じ紅茶のカップを両手で持って、紗江がふふ、と笑った。
そんな何気ない日常が戻りつつあり、少し安心する。
時間は止まったままではいられない。
弟のいなくなったこの世界に、早く慣れなくては。
「それで……予定してた食事会だけど」
しまった。
完全に忘れてた。
婚約しますよ、という両家の約束を確たる物にする目的の食事会。
その予定は、確か来週だった……