君と、世界の果てで


忘れていた罪悪感で、どうしようと思っていると。


紗江が沈痛な面持ちで先に口を開いた。



「延期にしようね。

来年の春でも良いんじゃないかって、パパが」


「そうか……悪いな」


「そう謝らないで。

私も、まだそんな気持ちになれないし」



うつむいた紗江の顔は、いつもどおりの美人だ。


こんなに気を使ってくれる彼女といるのに。


この胸に巣くう虚しさの正体は、いったい何なんだろう。



「で、お葬式の後だけど」



急に話題が変わり、頭がついていかない。


俺は間抜けに聞き返してしまった。



「へ?」


「巨乳ちゃんと、何しゃべってたの?」



口に含んだ紅茶を吐き出さないように、何とか喉に押し込んだ。



「っ……お前なぁ、女のくせに巨乳ちゃんとか言うなよ……」


「ごまかさないで。何話してたの?」


「別に……弟の彼女だから……、

迷惑かけて悪かったとか、そんな話だ」


「ふうん……」



さすがに、『第一発見者だから』とは言いにくい。


発見者。


その言葉を思い浮かべると、同時に、陸の自殺現場を想像してしまうからだ。



そうだ。もう一つ、忘れてた。


そろそろ、深音に連絡しないと。

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