君と、世界の果てで
「まだ、持ってろ」
「え……?」
「当分買い手はつかねぇから。
遺品整理はしなきゃならねぇけど。
ベッドは、最後まで残しておくから」
自分勝手な弟を想って、眠れない君にできる事。
俺には、これくらいしかない。
深音は、大きな目をぱちくりさせた。
「あと、陸に……その、頼まれたんだ」
「はい?」
「もしも、陸に何かあったら、アンタをよろしくって」
「陸が、そんな事を……?」
黒い瞳が、水分を湛えて、キラキラと輝いた。
きっと、泣くのをこらえているんだろう。
「だから……バンドとかで、困った事があったら……
俺で解決できそうな事は、遠慮なく言えよ」
深音は、何も言わなかった。
その代わり、小さく微笑んで、俺を見て。
こくり、とうなずいた。