君と、世界の果てで
画面に表示された名前を見て驚いた俺は、制作中の模型を思わず落としそうになった。
卒業論文ならぬ、卒業制作だ。
『夢の建築物』
というテーマで、建物の模型を作るのだ。
これがあがらなければ、卒業できない。
もう、終盤にさしかかったそれに、仕上げの塗装をしたところだった。
手袋を取り、慌てて電話に出る。
「……はい」
『もしもし。
深音です。わかりますか』
「あぁ、もちろん」
忘れるわけがない。
ビスクドールのような、弟の元恋人。
この前彼女を送った後、残された香水の匂いを紗江に気づかれないように、
車内に消臭剤を山ほど撒くはめになった。
「どうかしたか」
『翼さん、今、どちらですか?』
「大学だけど……」
『あの……夕方から、駅前でお会いできませんか?』
断るわけもなく、俺は夕方、駅前に行った。
俺の方から、何でも言えとは言ったけど。
まさか、こんな数日で連絡が来るとは、思っていなかった。