君と、世界の果てで
だから、少し戸惑っていた。
あぁ、もっとちゃんとした格好をしてれば良かった。
紗江に会う予定がない日は、かなり適当だ。
というか、もともと好きな、パンクな格好が多い。
今日も黒のライダース(ライダーじゃないのに)の下は、
タンクトップに薄手のニット(母親には地引網と言われた)。
下半身は、ダメージ加工のデニム。
足元は、黒いブーツ。
ダメだろ……。
いやいや、デートじゃねぇんだから。
しかし、シド・○シャスを気取った首の南京錠だけは、はずした方がいいか……
って、いやいやいや!
だから!
デートじゃねぇって!
良いんだ、これが俺のスタイルなんだ。
ブツブツ言いながら、指定された喫茶店に着いた。
いらっしゃいませ、と言う従業員の声より先に。
「あっ、翼さん!!」
と言う、男の声が聞こえた。
そちらを見ると、愛想良く手をふる、関崇文がいた。
陸のバンドのギターだった男だ。
横には、ヘッドドレスをした深音が座っていた。