君と、世界の果てで
「……昔の知り合いなら、紹介できるかもしれないけど……
ベースとドラムだな?」
「翼さん!ありがとうございます!」
「まだ、誰も紹介してねぇだろ」
キラキラ瞳を輝かせる崇文の表情は、少し陸に似ていた。
陸ほど美形じゃねえけどな。
そんな弟みたいな男が、俺の機嫌をうかがうように、猫なで声を出す。
「あの……翼さん、ベースなんすけど……」
「あぁ?」
「翼さんは、無理ですか?」
「はぁ?」
「翼さん、うちのバンドでベース弾いてくれませんか?」
知らぬ間に深音が注文してくれたらしいコーヒーが運ばれて。
沈黙の中、ソーサーとカップがカチャカチャ鳴る音だけがした。
「お願いします!
陸の書いたスコア、複雑過ぎて……
こんなの弾けないって、他のベーシストに断られたんです」
「……いや、でも、俺は……」
「深音は、陸の曲じゃなきゃ、歌わないって言うし」
深音は、また泣きそうな崇文をにらんだ。