君と、世界の果てで
「……!」
俺のピックを持つ手が動いた途端、崇文と深音が、息を飲む音が聞こえた。
あぁ、やっぱり、手首も指も、完全じゃねぇな。
……この振動は、久しぶりだ。
こんなに心地良いものだっただろうか。
内蔵を揺さぶる、低音が響く。
一回目のサビが終わったところで、不意にギターが止まった。
「?」
何事だ?
崇文を見ると、俺の方を見て、涙ぐんでいた。
「すげ……翼さん、すげえ」
「あぁ?」
「マジで、陸だ……」
「それ、特技だもんな」
渚が、口を挟む。
「知らないやつ多いけど、こいつ絶対音感と記憶力は、ずば抜けてるぜ」
そう。
俺の特技は耳コピ。
一回聞いた曲は、すぐ弾ける。
で、すぐ覚えられる。
多分、幼少時にピアノを習った効果だろう。
「マジで?!」
「あぁ……耳は、昔から良かった」
「だから、そんな次元じゃないって」
驚く崇文と、自然な俺のかけあいが面白いらしく、渚がケタケタと笑う。