君と、世界の果てで
無理矢理はがそうと、その細い肩を持った瞬間、彼女の声がした。
「……違います」
「はぁ?」
「陸とは、違う……翼さんのベース」
「え?完コピしたつもりだけど……」
何か違ったか?
自分勝手なアレンジはした覚えがない。
耳が鈍ってたか。
「そうじゃなくて。
陸のベースを、一枚厚くしたような感じで……」
彼女は、興奮した様子で、抱きついたまま、俺を見上げた。
「素敵!」
星を抱えた夜空のような瞳が輝く。
白い頬は上気して、薔薇色に染まった。
唇は、その中でも一層紅くきらめいて。
あぁ、何でこの子は、一瞬ごとに、こんなに綺麗なんだ。
いつも、違う顔を見せる。
そりゃ、知り合ったばかりだからかもしれないけど。
その度に、脳が揺れるような衝撃を感じた。
「陸と違うから、歌えないか?」
「もう、いじわる。
翼さんのベースなら歌います!」
意地悪を言うと、今度は、すねた子供のような顔をした。