君と、世界の果てで
(2)何のために
「まぁ、お久しぶり」
本当に久しぶりで、紗江の顔を見た。
今日はちゃんと無難な、紗江の好みの服を身につけてきた。
しかし彼女の声はトゲトゲしく、明らかに怒っているのがわかる。
「……卒業制作で、忙しくて……」
「ふーん。あ、ケーキ食べたい。おごりよね?」
「はい。すみません……」
今回は、大学の近くの喫茶店で、待ち合わせをした。
学内のカフェには、美味いケーキが無いからだそうだ。
はあ。
どうしたもんか。
「まぁ、色々あって、忙しいのはわかるけど。
メールくらいできたでしょ」
「悪い……」
じゃあお前から連絡よこせばいいだろ。
とは、言いたくても言えなかった。
陸が亡くなった事で俺に気を使っているから、連絡を待ってたんだろう。
「機嫌なおせって。な?」
「……クリスマス」
「あぁ?」
その単語を聞いただけで、体がビクリと反応してしまう。