君と、世界の果てで
……そうか、そう思うよな。
「一緒には、見れねぇ」
「何で?」
「……出るから……」
「ん?」
「俺、出る側だから」
少しの沈黙の後、紗江の手から、フォークが落ちた。
皿に当たって、カチャンと音がする。
そして。
その顔が、鬼のように歪んだ。
「はあぁ!?どういう事?!」
「すまん!頼まれたんだ」
「もう、やらないんじゃなかったの!?」
「それが、陸の代役なんだ」
紗江が、口を閉じた。
周りの客の視線にも、気づいたらしい。
「陸君の?」
「陸のバンドのメンバーに、ベースが見つからないと泣きつかれて……。
兄としては、弟の尻拭いをしなきゃいかんかと……思って」
「引き受けたの?」
「代わりが見つかるまでな」
紗江は、大きなため息をついた。
「クリスマスは断れないの?」
「陸が亡くなる前から、決まってたみたいで」
「……もう、お人好し!」