君がいたから。
01.蒼side。
「蒼、ちょっといいか?」
「うん?」
父さんに呼ばれて、リビングに向かう。
「実はな、父さんの仕事の都合で引っ越すことになった。」
「え…?」
席に着いた途端、告げられた一言。
「どこに…?」
「東京だ。」
東京…?いくらなんでも遠過ぎる…。
「蒼には、学校を転校してもらう。いいな?」
「…、分かった。」
未成年でまだ高校生の俺は、親に従うしかない。
「穂乃花…。」
自分の部屋に戻った俺から、無意識に出た名前。
穂乃花になんて言えばいい?
俺が引っ越すって知ったら、あいつは…
「まだ、言わなくていいよな…。」
引っ越すのは、1ヶ月後。
穂乃花には、まだ引っ越すことは言わないで、過ごすことにした。