君がいたから。
「おせーよ。」
玄関を出ると、不機嫌な顔をした蒼が待っていて。
「いやー、昨日雑誌読んでたらさー。」
言い訳じゃないけど、こんなことを言う私を無視して蒼は自転車にまたがった。
「ほら、さっさと乗れ。ま、完璧遅刻だけどな。」
そう言って私を睨む蒼。
「ごめんなさい…。何か奢らせて下さい…。」
「じゃあ、放課後クレープ屋。てか、早く乗れ。」
私はしぶしぶ後ろに乗った。
ぎゅっと、後ろから蒼に抱きつくと、
「よし、しっかり捕まっとけよ?」
そう言って自転車をこぎ始めた。
小さい頃とは、全然違う蒼の背中。
広くなった背中に、顔を沈めた。