終わり、始まり!
「本当? 山本はどうすんの?」
「ああ、いや、大丈夫、俺はふたつ持ってるから!」
今、明らかに動揺した。これは、傘をふたつ持っているなんて嘘だろう。
山本はこういうとき、わかりやすい。
でも、なんのためにそんな嘘をつくのか理由が見当たらない。
「本当に? 私がこれ使っていいのね?」
「いいから早く受け取ってよ」
「え、ちょっ」
半ば無理矢理だが、山本の黒い傘が私の手に握られた。本気で貸してくれるみたいだ。
なら、お言葉に甘えてしまおうかな。
こんな雨の中をずぶ濡れで帰るのも嫌だし、山本はいい笑顔でこっちを見ているし……。