終わり、始まり!



「じゃあ、借りるよ。どうもね」



私がそう言うと、山本は何故か小さくガッツポーズをした。



「じゃあ、さよなら」

「待った!」



やっと帰れるという矢先、山本は右手首を掴んで私の歩みを止まらせた。

まだなにかあるらしい。



「今度は何?」

「貸すんだよ? 俺が」

「うん、ありがたく借りるけど?」

「じゃあさ、お礼してよ、俺に」

「はぁ?」



私は心の中で「またよくわからないことを……」と呆れ返った。

そんな私を無視して、山本は続ける。



「お礼してよ、ね! お願い!」

「いや……」

「返事もらえるまでこの手は離せないなぁ」



右手首を掴む力が少しだけ強まった。私の力じゃ振り切れないだろう。



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