終わり、始まり!
「え、マジで? いいの?」
「実はこの映画、気になってたんだよね」
そう、今度友達を誘ってでも観に行こうとしていた映画だ。それが観れるなら別にいいかな、と思った。
山本も嬉しいだろうし、私も嬉しい。
こんないいことがあるだろうか。
ますますお礼という意味が薄れていく気もするけど。
「やっぱりね! あかねちゃん昔からこういう系の映画にはすぐ食い付くし」
「だって大体面白いんだもん。……で、そろそろ離してくれない?」
「あ、わりぃ」
山本は私から手を離すと、
「じゃあ詳しくはメールする!」
と言って、素早く靴に履き替えると走って行ってしまった。
手に傘はなかった。やっぱりふたつめの傘は存在しなかったみたいだ。