天国のマシュに会いたい
私はその言葉に、その場に倒れてしまいそうなほどのショックを受け、先生に懇願した。



「命だけでも助けてやって下さい」



そしてマシュの年齢を訊ねられたので、一歳と二ヶ月にも満たないと言うと先生は
「一歳・・・」
と呟くと、少々驚いた表情をした。

「まだ一歳なの・・・」
ともう一度呟いた。

今まで、こちらの病院で診察した同様の病気の猫では最も若いような表情である。

「そしたら若さに賭けるしかないですね。歩けなくても命だけでも助ける努力をします」
と言うと、治療を始めた。

そして入院するので治療費は終わってからでよいと言って私たちを帰らせた。

千恵子がその日の会社の帰りにマシュの様子を見に立ち寄った時には意識は無く、集中治療室で酸素吸入と点滴をしていたらしい。

私はそのマシュの様子を千恵子から聞いたがショックが収まらずに、ひどく落ち込んでいた。

夕食も喉を通らなかったし夜も眠れなかった。



次の朝、病院は九時に開くのでマシュの様子を見ようと、八時半に家を出て病院に向かった。

車で向かいながら、なぜか涙が出てくる。
< 106 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop