天国のマシュに会いたい
ただ、しきりと周りを見渡して、それまで住んでいた部屋の様子とは違うので少々は気にしている風であった。

そして部屋の中を歩き出すとあちらこちらを、くんくんとにおいながら移動していく。

私は、しばらく様子を見ていて知佳の使っていたベッドの上で居るマシュの横に座り、身体を撫でてやり頭を擦ってやった。

三十分くらい居たであろうか

「今夜から、この部屋で過ごすんやで。なあマシュ」
と言い残して、部屋を出て行った。

私たち夫婦の寝室は知佳の部屋の隣にあるので、私が眠りに行く前にマシュがどうしているのか覗くと、真っ暗な部屋の窓から街灯の光が入ってくる外の景色を眺めていた。

いったい何を想い何を考えていたのであろうか・・・

翌日は日曜日であり、千恵子は仕事が休みの日には、いつも起きるのが遅く、昼近くまで寝ていることもあった。

私は日曜日でも仕事があれば仕事に行くのだが暇で家に居た。

私は八年ほど前に会社を退職して内装塗装や部屋の美装の仕事を始め独立したのだった。

一年目は三百万、二年目は四百万、そして三年目は六百万と順調に売り上げを伸ばしていったのだった。

ところが、その翌年に大変な事態になってしまったのである。
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