天国のマシュに会いたい
私がキッチンで夕食の支度をしていると
「カツ、カツ、カツ・・・」
とマシュの歩く音が近づいて来てカーテンドアの前で止まる。

もちろん後ろ足が一本になってしまい、残っている右足の爪も無くなってしまっているので、踏ん張りが利かないから、カーテンドアをくぐって入ってくるのは無理だが、私がカーテンドアを開けると、ちょこんと座って
「えへ」
と私の顔を見つめる。

私はキッチンの中にマシュを入れてやると食事の準備をする。

「マシュよ・・・マシュポー・・・」
とか呼びながら、食事の支度をするのが楽しかった。

マシュは、しばらく留まっているとリビングへ帰りたがるのでカーテンドアを開けてやる。

「カツ、カツ、カツ・・・」
と音を残して、マシュが離れていく。

九月四日だった。

私は、朝、目が覚めると、新聞を取りに玄関へ行き、いつもの癖で、リビングのドアを開け放してきた。

その時マシュの姿はリビングのドアの所からは、どこに居るのか見えなかった。
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