天国のマシュに会いたい
私は賃貸住宅のリフォームや美装が、おもな仕事なので、引越しが年間で最も多い、年度替りの、この時期が一番忙しく、それ以外の時期は暇でも、さすがに三月は忙しかった。

私が家を出ようとすると、いつものようにマシュが玄関まで送ってくれようとするが、私は見送りに出てくるマシュに向かって

「行ってくるで」
とバイバイをすると、急いで家を出て仕事場へ向かうのであった。

そして千恵子が九時半頃になると、いつものように仕事に出て行った後は、家の中は三匹だけである。

クロは、この頃になると暖かいので、朝から外に出たりする。
そうすると家の中に残っているのは二匹のみである。

この頃の猫たちが、家に残って、どのように過ごしていたのか分からないが、だいたいクロとミルは家でいると、横になって寝ていることが多い。

マシュは人が居ると、ほとんど寝ることが無かったが、この時期は日中は誰も居なくなるので寝ていたのだろうか。

ほとんどの日は、私が朝早くに仕事に出るので、私の方が千恵子よりも早く家に帰っていた。

家に帰り着くと、車の音で分かるのだろうか、足音で分かるのだろうか、玄関を開けるとマシュが、ちょこんと座って待ってくれている。

「おかえり」
と出迎えてくれるのが、嬉しくて可愛くて、マシュを撫でてやるのだった。

毎日が、そうであった。
< 63 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop