天国のマシュに会いたい
千恵子などは蚊に刺されても

「痒い、痒い」
と言いながら掻いているだけで済むが、私はそうはいかない。

だから私がマシュを散歩させる時には、長袖のシャツを着て帽子を被り耳を隠すようにタオルを首に巻き、蚊取り線香を腰から二個ぶら下げて外に出ていた。

しかしそれでも蚊が私の近くを飛ぶと気になる。

しかたがないので次第にマシュの散歩は千恵子に任すようになる。

私は千恵子が帰ってくるまでに夕食の支度を粗方しておいて、千恵子が帰ってからマシュを散歩に連れて出てもらうようになる。

マシュはいつものように四時前になると

「早く行こうよ」
という風に、夕食の支度をしている私の所へ来て待っているが、散歩は千恵子に任せているので、仕方無しに

「マシュよ・・・マシュちゃんよ・・・」
とか言いながら、支度をしていると、例のようにマシュは私の足元でごろんと寝そべって

「まだぁ~」
とでもいうような態度である。

どうしようもないので支度が早く終わると私は家の中でマシュと遊んでいた。
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