結婚しました!
「お父様…」

音々は手紙を読みながらぽろぽろ涙を流した。

遺言状も、この手紙にあったようにきちんとした形で記載されていた。

「あなたがたは、こんなに深く愛し合ってた親子の気持ちを、

 平気で踏みにじったんですか?」


「この家は、この子には荷が重いでしょう?

 旧家の築いてきた歴史と信頼は、

 養子のこの子には無用の長物のはず。

 これから、地元で選挙に出る私たちには必要なものなのですよ。

 それに遺産て言ったって大してないんですよ。」

語るに落ちるな。

自分たちの都合を大上段に持ってくるとは、情けないやつらだ。


「だから?

 だから手紙を隠す理由にはなりませんよ。

 それよりなにより許せないのは、ほとんど何も持たせず

 家を追い出したのはなぜです!

 私はそれが一番許せないんです。」


「それは!この子が息子を誘惑したから!」

叔母は真っ赤になって、ブルブルと唇を震わせていた。

「息子?」

俺は音々を振り返った。

音々はぎゅうっと俺のシャツを掴むと、

何も言わずに首を振った。
< 100 / 206 >

この作品をシェア

pagetop