結婚しました!
「いいんです、八起様。

 元々、遺産とか貰うつもりはないです。」
 

「そういう問題じゃないだろ?

 人として、やっていいことと悪いことがある。


 君を身一つで放り出すような真似をして、

 当然明らかにしなくてはならない事実を、

 隠蔽してしまおうとする態度は、

 許してはいけない。


 とにかく、君のお父さんが残した言葉を、

 きちんと聞いてからでなくては、

 簡単にサインとかしてはいけないよ。」

「お父様の言葉…?」

「そうだよ、遺言というのは、故人が生前きちんとした形で、

 遺族に残していくメッセージなのだから、

 君には聞く権利と聞く義務がある。」

「そうなのですね。私は父の言葉を聞かないで、

 お別れをしてしまうところだったのですね。


 叔母さま、その遺言書というものがあるなら

 見せていただけますか。」


「そんなもの、ないわ!」

「そうですか、ならこの書類は必要ないということですよね、

 なら、持ち帰って弁護士を通して改めて伺いましょう。」


俺は、音々の手を握って席を立った。






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