結婚しました!
ビーフストロガノフなるものがこたつの上に乗っていた。

ポトフだの、ラザニアだの、

到底こたつには似合わない食事。

ウイーンで日本人向け料理教室に通ったという音々が作る料理は

俺が食べたことのないものばかりだった。

着替えのために部屋に行く時でも、

「八起様!八起様!」

音々が嬉しそうに俺にまとわりつく。


「本当に子犬みたいな女だな。

 ちょっとは落ち着きなさい。」


そう言いながらも、


自分がにやけているのがわかる。


新婚というのはこういうものなのだろうか。


脱いだスーツはハンガーにかけられ、

着替えまでしっかり準備される。


至れり尽せりで、

本当に現実なんだろうかと戸惑ってしまう。


「なあ、音々、お前いつまで日本にいたんだ?」


ビーフストロガノフなるものを食べながら、

音々に尋ねた。








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