結婚しました!
「父がこっちに来るということになっていて、

 とても楽しみにしていたのに…」


「そうか、残念だったな。お父さんが好きだったのか?」


「はい。大好きでした。」


俺はそう言って笑う音々の頭を、

ガシガシと撫ぜた。


「そういえば、お前、なんでこんな髪の毛短くしてるんだ。」


「あ、こっちに来る旅費が足りなくって、

 日本人の髪って結構高く買ってもらえるんですよ。」


「お前、売ったって…」


なんだよ、髪は女の命なんだろ、

なんてやつだよ。


「髪は伸びますから。それに髪が少ないとドライヤーもいらないし、

 シャンプーも減りません。」


「馬鹿だろお前…」


「もう!八起様ひどいです。」


「馬鹿だよ。」


俺は抱きしめずにはいられなかった。


そんなことまでして戻ってきたのに、

家追い出されて、

見ず知らずだった俺のそばで笑ってる音々が、

かわいそうで愛おしくて…







 
< 78 / 206 >

この作品をシェア

pagetop