結婚白書Ⅲ 【風花】


「君らは そうやって言い合えるから上手くいってるんだな」


「何だよ お前こそ 朋代さんといると良い顔してるぞ 

遠野のそんな顔 初めて見たよ」


「私もそう思うわ 遠野君って昔からそうだけど あまり感情を出さないのに

朋代さんといると いままで見たことのない表情をするわよ 

いい方にめぐり合ったわね」



衛さんの満更でもなさそうな顔に 志津子さんが

”ほら その顔よ もぉ 妬けるわねぇ” とまたからかう


衛さんにとって 私との結婚が本当に良かったのだろうかと 心のどこかに

感じていた私は 蓮見さんご夫婦の言葉が とても嬉しかった



「そんな貴方たちだから ちゃんと式を挙げて欲しいのよ」


「前にも言ったが 晴れがましいことは僕らは望んでないよ」


「ねぇ 二人とも 結婚式を華やかなものだって勘違いしてない? 

そういう私たちも 同じだったけど」



志津子さんの言葉に 怪訝そうな顔をしていると 蓮見さんがあとの言葉を

繋いだ



「僕らも入籍だけの結婚だったんですよ 

それも子供ができて あわてて入籍したんですから」


「言われてみれば 蓮見の結婚式に出席した記憶がないな」


「そりゃそうだろう 呼んでないから出席してないはずさ」



蓮見さんは冗談で返したあと 真顔になった



「こっちに赴任して間もなくだったか メルボルンの友人を訪ねたんだ

そのとき紹介された牧師さんの話に感銘を受けて 思わず

”式を挙げさせてください” って頼んだんだよ」


「あの時は私もビックリしたわよ だっていきなりだったし 次の日 結婚式よ

衣装も何にもなくて 普段着でベールだけ貸してもらって……

でも良かったと思ってるの 結婚式ってこういうものだなぁって 

本当にいいものだって……」


「どんなお話だったんですか?」



それはいろいろね……と志津子さんが少し話をしてくれたが 

まずは牧師様の話を聞いてみたらと勧められた




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