結婚白書Ⅲ 【風花】
5.共鳴


赤ちゃんって こんなにも可愛いものなんだ

昨日兄貴の家にきてから もう何度 大輝の顔を覗いただろう


すやすや寝てる顔 

ふにゃふにゃ泣く顔

グズグズいって 和音さんを困らせてる顔

一番好きなのは おっぱいを飲むときの顔


んぐんぐ言わせながら 全身のエネルギーを使っておっぱいを吸っている


それから 大輝におっぱいを飲ませている和音さんの顔も好きだ

人って こんなにも幸せそうな顔をするんだ

大輝を見つめる目が慈愛に満ちている


彼女に初めてあったのは 兄貴達が婚約する少し前

同姓から好感が持たれそうな顔立ち

誰に対しても穏やかな笑顔の持ち主だった 


人付き合い対し いつも距離をおく私でさえ

和音さんと話をしていると なんでも打ち明けてしまいそうになる


結婚する気など到底なかった兄貴が 彼女に会ってからあっという間に

結婚を決めた

妹から見ても微笑ましくなるくらい 仲が良かった

それは 結婚してからも変わっていない



「大輝は大丈夫だから 明日は 朋代と一緒に出かけてくればいいよ

離乳食さえ準備しておいてくれれば 問題ないだろう」



兄貴って いいところあるじゃない

こんな赤ん坊の面倒を一人でみようなんて 

結婚前の姿からは想像できないわね

兄貴の薦めで買い物に出かけ 和音さんとランチをしながら 

兄貴の変貌ぶりを話すと



「そうなの? いつもあんな感じよ 私たちね まだケンカしたことないの」



義姉のノロケ話 聞いている方が恥ずかしくなるわ……

そんなに仲がいいなんて 妹としては喜ぶべき事ね



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