結婚白書Ⅲ 【風花】
翌朝は いつもより早く目が覚めた
帰宅したままの部屋を手早く片付ける
テーブルの上には 彼が口をつけることのなかったカップが寂しげに乗っていた
顔に張り付いた髪をかき上げる
そういえば シャワーも浴びていなかった
熱めのシャワーを全身を浴びた
昨夜 彼が触れた部分に手をおいてみる
唇に 首に 肩に 胸に……
彼の名残を感じたかった
首を振って それらの想いを振り払う
想ってはいけない人だから
体を拭いて 何気なく鏡に目をやると そこには 彼の名残が映し出されていた
肩先と胸元に 血の滲んだような跡
振り払ったはずの 彼への想いが急激に蘇り
泣き腫らした目から また涙が溢れてきた