結婚白書Ⅲ 【風花】
4月の転勤で彼は地方に異動した
会えるのは週末だけ
その週末さえ 待ってた 会いたい の思いはない
なんとなく付き合って2年間
彼から好きだと言われたこともないし 私から言った記憶もない
一緒に過ごしてイヤじゃないから付き合っている そんなところかも
彼の真面目さ 常識的な部分には共感する
仕事は真剣に取り組むし 時間にルーズでもなかった
私との約束も守る 酒にも飲まれない
なにより 私に対して余計な詮索はしなかった
そして 私も彼の行動を詮索しない
許容範囲の一致
これは男性と付き合う上で大事なこと
タバコを道に捨てる彼がイヤだと そんな理由で別れた友人がいたけど
それって お互いの常識の範囲がずれてたってことよね
その点 私と彼は常識の範囲が一緒
付き合いはじめた頃は それなりに男性といる緊張感と
甘やかな感覚があったのに
手を触れられただけで ”ドキッ”とする あの高揚した気持ちは
いまはどこにもない
倦怠期なのかしら……
28歳 そろそろ 「結婚」 の二文字がちらつく
親も 「お付き合いしている人がいるのなら 連れていらっしゃい」と言う
一時期 私の恋愛にうるさく干渉した母も 去年結婚した兄に
今年子どもが生まれてから興味は孫へと移った
母やおばにせっつかれて 仕方なく見合いをした兄だったが
とても素敵な女性に巡り会った
就職して都会に行った兄は 実家に帰るのも一年に一回だったのに
彼女に出会ってから 彼女に会うため一月おきに帰省した
妹から見ても そんな兄はほほえましく写った
義姉になった和音さんは私より一つ年上
女の兄弟がいない私は姉が出来て嬉しかったし 末っ子の和音さんは
私を可愛がってくれる
義理でも姉妹になると 友人達とは違った親密さが芽生えた
兄貴みたいに 見合いで運命の人に会えたら幸せよね
私と彼は どうだろう
運命の人と呼ぶには何かが欠けてる気がする
「結婚なんて 成り行きや勢いでするものよ」
これは 兄の見合いを仕組んだ 芙美子おばさんの口癖
でもね おばさん 私と彼の関係には勢いがないの
これってどうしたらいいのかな……