恋はいっぽから!(続編)~夜明けの珈琲~
彼女が持参したエコバッグ2コを抱えて……
雨上がりの空の下、
俺達は…、帰路についた。
「…先生、重いでしょ?一つ貸して下さい。」
「……いいから、お前は足元見て歩け。」
手持ち無沙汰で落ち着かないのか……、
さっきから、チラチラとこっちばかり見ている。
時折、派手に水を弾く音が聞こえて…。
その度に、「ひゃっ」と奇妙な声を…上げていた。
「見てますよ…、足元。先生の言った事は…守ってるつもりです。」
………。
「卒業してから…、何度も何度も見ました。それまでは…皆さんがいてくれたから、気にせずにいられたんでしょうね。でも…、先生と離れて、誰もいなくて、自分で何とかしなくっちゃっていう時に……、あの歌を聞くんです。一度立ち止まって、ちゃんと地に足がついてるのかなあって。」」
「……へぇー……。」
「ちゃんと…、歩けていますか、私。」
「………。そうだな。少し、驚いたよ。」
「…何で?」
「思いの他…、しっかりしてるから。つっても、喧嘩して飛び出して来るあたりは…やや暴走癖が残ってるな。」
「…………。ふふっ、そうですね。」
街中で、肩を並べて歩いていることさえ…不思議だった。
あの頃できなかったことが、
こんなにも違和感なく…できてしまうのだから。
「あれ…?ニシハル…?!」
途端に…、誰かに声を掛けられる。
背後へと振り返ると。
そこには……
今の教え子たちの姿。
気づいた一歩は、俺との距離を…図る。
「ニシハル料理なんてするんだ?」
「エコバック似合わね~!」
「…お前ら…、今は男も自炊する時代だぞ。」
俺の返答を聞くか、聞かないうちに。
生徒達の視線が……
一歩へと向けられる。
「……てか…、もしや……彼女?」
「…………。」
ちなみに一歩は…、ゆっくりと後ろへ下がる。
なにしてんだか…。
「……。そーだよ。」
俺は彼女の腕をひいて…、逃げないようにと、ガッチリと肩を掴む。