恋はいっぽから!(続編)~夜明けの珈琲~
目の前に並んだ…沢山の料理。
「…………。凄いな、コレ。」
数年前の…クリスマスを思い出す。
そういえばあの時…二人でキッチンに立ったものの、俺は大した手伝いもできずに…今日みたいに彼女一人で作り上げたようなものだった。
「本日は和食にしてみました。」
「………。良妻賢母でも目指してるの?」
「え?」
「……イヤ、何でもない。」
「……?」
今日半日の…、彼女の行動を振り返ってみると。
それに当て嵌まるものが…沢山あった。
そうか…、俺が彼女の料理を口にするのは……
あの日以来だ。
「「いただきます。」」
二人で手を合わせて。
まずは煮魚へと…手を伸ばす。
「……………。」
「あの…、お口に合うでしょうか?」
「……………。」
合うも何も……
ここは料亭か?
「…お前、先生なんてならないでこっちの道に進めばいいんじゃないの?親父さんの血引き継いでんだからさ。」
「はい?」
「勿体ない。」
「……?ですが、私は食べる方が好きでして。」
「……ふーん。」
「…あの……。」
「ん?」
「それは美味しいってことでいいんでしょうか…?」
………。
そういや…、遠回しなアプローチは…駄目だったな。
「旨い。日本酒呑みたくなるな。」
途端に…、彼女は顔を綻ばせる。
「……奇遇ですね。実は私も大人になったら先生としたいことがあって……。……あの…、先生の行きつけの飲み屋に行ってみたいんです。」
「……は?」
「だって…、憧れてたんですもの。……駄目ですか?」
「………。」
こうも懇願されると……、
逆にこっちまでそうしてみたくなる。
もっと彼女を知ってみたい…、
一日限定のこんな日だからこそ……
彼女を楽しませてやりたい。
時刻は午後…、7時。
「…この後…、行くか?」
夜は……
まだまだ、長い。