恋はいっぽから!(続編)~夜明けの珈琲~
「……いらっしゃいませ。」
バーの扉を開いた途端に、馴染みの顔が…驚いた顔つきで、俺と一歩の顔とを見比べた。
「……ハル!お前…久しぶりだなぁ!」
「よ。久々。」
「カウンター空いてるからどーぞ。」
バーテンダーにそう促されて、カウンター席の一番奥へと二人肩を並べて座る。
「なんだよ~今日ガラガラなんだから真ん中に座れよ。」
「いーんだよ。」
「………。なるほど。勿体ないぶりやがって。」
「…うるせ。」
ニヤニヤと含み笑いする奴が…
彼女にその矛先を向けた。
「…ハルがここに女連れてくんの、君が初めてだよ。」
「えっ…。」
「崎本。余計なこと言うなっ。」
「……ハイハイ、でも…、なる程ね~。このコが寺澤の言ってた…」
「店、代えようか。」
「………。何でもないです。えっと…ご注文は何にします?」
「…一歩は?何にする?」
メニューを彼女に差し出すと……。
「ギムレットで。」
目を通さずに…、そう答えた。
「……。割と強いの行くな。じゃあ俺も同じで。」
憧れとか言っていたけれど。
オーダーした酒といい、この落ち着きようは、どう考えても…、
初めてではないだろう。
「……お前…、よく来るの?こーゆー所。」
「行くのはほとんど居酒屋です。あ。でも…、2次会はバーが多いですね。」
「学生は飲み会が多いからな。サークルか何か?つか、そんな話したことなかったな。」
「言われてみると…、そうですね。迷いに迷ったの末に…、お笑い研究サークルに入ったんです。」
「…………。」
妥当すぎるが…、一体何と迷ったんだ。
「…で?どんな活動してんの?」
「ええ…と…、スクリーンにてお笑いステージを鑑賞したり、週イチでネタの発表。たまに…お笑いバーでのコント披露なんてものもあります。個々に芸人さんのコントを見に行く方も多いんですよ。ここからお仕事に結び付く人がいるのですから…、凄いことです。」
目が……
キラキラとしている。
「そういえばそういう笑いのセンスもあったな、お前。楽しそうだけど…、その道に行かなくていーの?勿体ない。」