恋はいっぽから!(続編)~夜明けの珈琲~
「ええ。あくまでも趣味の範疇内ですので。」
「ふーん…。」
そこで、ちょうど…
「…お待たせしました。」
…と、目の前にギムレットが置かれた。
「……じゃあ…、今日もお疲れ様です。」
彼女はそう言って。
グラスを下方にして合わせる。
カラン…と音を鳴らして…一歩はそれをひと口飲んだ。
「………。」
『お疲れ様』か……。
人にそう言ってもらうのは…いつぶりだ?
「あ、美味しい。」
「黄金比率で作らせて頂いたからね~、足腰立たなくならないように気をつけて。あ、でも…ハルが優し~く介抱してくれるからいっか。」
「…崎本…。だからさ…」
「大丈夫です、鍛えてますから。」
「……ハ?」
「二週間に一度、お笑い会と言う名の飲み会がありますし、あとは…ゼミ仲間やバイト仲間ともよく飲むので。」
「「…………。」」
「…だからあんなに必死にバイトしてんのか…。」
「世の中には付き合いというものがありますから。」
……サラリーマンか。
「まあ…、いいけど。なあ、ところでお前もコントとかしてるの?…ピンで?ちょっと見てみたいなぁ…。」
「残念ですが…、相方がおりませんので無理です。」
……相方?
「…あらら…、ハルが妬いてるよ~?」
「や、別に。今に始まったことじゃないし。」
俺は酒をぐいっとひと口…飲んだ。
「……それもお伝えしておりませんでしたね。相方と言ったら…、やはり、彼しかおりませんので……」
「…ん?」
『彼』…?
「…嫌だわ、長南殿しかいないじゃないですか。」
「……ハ?」
長南……?
「大学は違えど、割とゆる~い規則でして。どちらかが在学していればコンビ組んでも問題ないのですよ。」
「…………。」
「幸い長南殿は地下鉄で20分とかからない所に住んでましたし、」
「ちょっと待て。お前から…誘ったのか?」
「はい。もう彼とは長い付き合いになりますね。」
「……………。」