secret name ~番外編~
「恋人居る言うた後に、言われてな。」
ひとり言のように続ける。
「何か求められたりはせんかったけど・・・。」


「嬉しかった?」


「え?」
二杯目のシャンディ・ガフを作りながら、なんでも無い事のようにノーヴェは言った。
セッテは目を丸くして、彼女の次の言葉を待つ。
「誰かが自分を好きになってくれるのって、嬉しい。」
違うの?と、小首をかしげながら。

嬉しいかなど、考えていなかった。
とっさにありがとうとは言えたものの、驚いたのと、自分の仕事に自信を失くしたので、手いっぱいだった。

「せや・・・な。嬉しい、かな。」
「うん。」

誰だって好意を寄せられたら、嬉しいものだ。
それがたとえ“セッテ”としての自分であったとしても。
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