secret name ~番外編~
セッテはバイクから降りて、ノーヴェの空いている方の手をつかむ。
スロットルを握っていた手は、冬用のグローブをはめていても、冷え切っていた。

「出す。」
「あかんて。」
「悩むぐらいなら、出せばいいのに。」

だからここまで来たのだと、口数の少ないノーヴェの瞳が語っている。
一瞬の隙をつき、ノーヴェはセッテの手を振り切った。

前にセッテが『8階からやと、やっぱ景色ちゃうんやな。』と、言っていたのを思い出していたから、8階であろう適当なポストに入れた。誰かが佳乃のポスト
に入れなおしてくれるだろう。そう、思いたい。

「・・・入れてもうた・・・」

がっくりとうなだれるセッテに、小首をかしげる。
ヘルメットがずれて少し重たかったが、何故そんな顔をされるのかが分からない。
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