secret name ~番外編~
「出した。」
「・・・せやね。」

力なく頷いたセッテは、ヘルメットのまま空を仰ぐ。
出したかったから用意したのに、悩んだ結果出せなくて、今こうして人の手によって投函された、年賀状。

幸せになれと言ってくれた佳乃に出来る事は何だろうと、考え抜いた結果だったはずなのに、いざ書いてみると恥ずかしかった。
本当は住所なんか無くても、こうして届ければ良いだけだとは、分かっていたのに。

「・・・鍵あるし、もう取り出せんわ。」

潔く、腹をくくろう。
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